3月1日(金)第4279回 山内昌之(東大名誉教授 武蔵野大学特任教授)
日本と日本人には国家戦略と戦略的思考がないとよく言われる。しかし、近世の開幕から四百年、日本人は世界史的に見れば合格点ともいえる戦略的システムを作り上げてきた。徳川家康は内戦を封じ込めて「日本1・0」を作り上げ、平和と安定の江戸社会を三百年近くも持続させた。私はいま『文藝春秋』で連載中の「将軍の世紀」で「日本1.0」に触れている。講演では、家康という稀有の「軍人政治家」を通して、リーダーシップと国際協調主義の在り方も考えてみたい。
講師紹介
1947年生まれ。北海道大学文学部卒業。東京大学学術博士。カイロ大学客員助教授、ハーバード大学客員研究員、東京大学教授・中東地域研究センター長を経て、現在は武蔵野大学特任教授、東京大学名誉教授、ムハンマド5世大学(モロッコ)特別客員教授。また、国家安全保障局顧問会議座長,教育再生実行会議委員、横綱審議委員などを務める。最近では、天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議、戦後70年首相談話懇談会のメンバーなども務めた。紫綬褒章、司馬遼太郎賞、吉野作造賞、毎日出版文化賞(2回)、サントリー学芸賞などを受ける。主な著書に『中東複合危機から第三次世界大戦へ』(PHP新書 2016)、 『中東国際関係史研究--トルコ革命とソビエト・ロシア1918-1923』(岩波書店 2013)、『幕末維新に学ぶ現在3』(中央公論社 2012)、 『ラディカル・ヒストリー--ロシア史とイスラム史のフロンティア』(中公新書 1991 ☆吉野作造賞)
『瀕死のリヴァイアサン』(TBSブリタニカ 1990 ☆毎日出版文化賞)、『スルタンガリエフの夢』(東京大学出版会 1986 ☆ サントリー学芸賞)。共著として『大日本史』(文春新書 2017)など。現在、月刊「文藝春秋」に「将軍の世紀」を連載中。