2月3日(金) アジア平和貢献センター共催シンポジウム
<問題提起> 早稲田大学教授 縣 公一郎氏
<基調報告> フェリス女学院大学教授 上原 良子氏
東北大学名誉教授 田中 素香氏
早稲田大学教授 福田 耕治氏
ヨーロッパの統合という歴史上初めての現象は、グローバリゼーションの当然の成り行きであり、統合の条件が世界でももっとも備わったヨーロッパに最初に表れたものと見られていた。したがって、人類社会は、それぞれの地域の特殊性に応じて、何らかの地域的超国家組織を形成していくのではないかとの予測の有力な材料と考えられていた。
ところが最近、そのような予測に水を差す出来事が起こった。イギリのEUからの離脱決定である。この出来事は、他の国々にも影響を及ぼし、EUは崩壊するのではないかとの予測をも喚起することになった。
私どもアジアに属する民族にとっても、これを単なる別地域の出来事として看過することはできない。なぜなら、ヨーロッパ統合が単にヨーロッパだけの現象ではなく、ヨーロッパに先行的に表れた人類自然の成り行きとすれば、アジアにおいても何らかの超国家組織の形成を考えなければならないが、その実験が失敗したのだとすると、国境が低くなっていく中で国と国との間の利害を調整する別個な方策を考えなければならないからである。
そのためにはまず、今回のイギリスのEU離脱という出来事が、例えばEU政治の不備といった特定原因に基づく一時的現象なのか、そもそも地域的超国家組織は無理なのだという本質的な現象なのかを見極めなければならない。それには、この現象を歴史的、経済的、政治的といった各方面から分析することが必要である。このたびのシンポジウムはまさにそれを意図したものである。