◆20世紀が戦争の世紀だったとすれば21世紀は自然災害と資源危機の世紀なのだろう。この先、温暖化、異常気象、大地震、大津波、大噴火が頻発し、人口爆発のもとで食糧と水とエネルギーが世界的に不足する可能性が高い、という危機意識のもとに書かれたのが丹羽宇一郎『人類と地球の大問題』PHP新書、864円)である。「これまでもなんとか乗り越えてきたではないか」という楽観論もあるが、本書は閾値を越えるとそこは「ポイント・オブ・ノーリターン」だと警告を発している。  海洋に溜め込まれた熱が大気中に放出されるとき温暖化は一気に深刻化する、人口激増のアフリカが農業大陸になることは土壌や教育面から長期的に難しい、水をめぐって国家紛争がこれから多発する、など貴重な指摘が参考になる。先進国と途上国、豊かな人と貧しい人とで人口、食糧、水、エネルギー問題の意味が決定的に異なって現象するという著者の柔らかい視線に同感するとともに、日本が「地球の生命線を守る国際フォーラム」の結成へ向けてイニシアティブをとれという提唱にも大いに賛同したい。
◆少数意見を貫くというのは言うべくして容易でない。そこには並々ならぬ努力と若干の勇気がいる。下條竜夫『物理学者が解き明かす重大事件の真相』ビジネス社、1944円)は非常に挑戦的な本で、「福島原発事故の過大評価と真実」「軽すぎた車両が招いた福知山線脱線事故」「STAP細胞は小保方氏でなく問題は若山研究室にあった」「和歌山毒カレー事件の証拠は本物か」「地球温暖化は本当に起きているか」など、その視点や論証には感服した。
どれもすぐれて論争的な内容であり、マスコミ情報しか知らなければ(それが国民の大多数だ)、奇想天外な問題提起ということになる。著者は物理化学専攻の大学准教授で、科学者らしい説得力に富んだ論理展開がなされている。マスコミだけで世の中を理解したつもりにならないため、こういう本で啓発されることも必要だろう。せめて週刊誌には本書を出発点にした企画を期待したい。大いに意味あることだ。
◆日本の商品や技術はダメと言わんばかりの意見が多いが、ニッポン再発見倶楽部『世界が感謝!「日本のもの」』三笠書房、637円)は真逆だ。蚊取り線香からレトルト食品、自動イカ釣り機、水道システム、納豆樹脂まで、97の優れものがコンパクトに紹介されている。多くは意外性があって面白いし、元気づけられる上に、製品開発のヒントも得られるだろう。
■ 上野の美術館、博物館は近傍の人のみならず上京して2、3時間余ったときの格好の訪問先としてお勧めしたい。藤森照信・山口晃『探検!東京国立博物館』淡交社、1836円)は絶好の案内書である。カラー写真と図解とマンガに気の利いた解説、これを読んで出かければ「トーハク」が何倍も楽しめるだろう。(浅野 純次)